元引きこもり大学生が、普通のバイトを1年間続けた話
僕は今、ネットカフェと塾講師を掛け持ちしている。
塾の方は、大学受験まで生徒としてお世話になっていたところなので、あまり働いているという感覚はない。
塾の講師は大学1年の初めごろからしているが、僕には大きな不安があった。
「大学に入ったけれど働けないのでは。。。。」
と常に思っていたのである。
今までバイトをしてきたことは何度かあった。
1度目は改装オープン前の中華料理屋。2度目はスーパーで品出し。そして3度目は郵便配達の短期バイト。
中華屋とスーパーは、いやになってやめてしまった。(いわゆるばっくれ)
郵便配達は短期なので、辞めますという必要がないので応募できた。
どうしても、働き続けていると苦しくなってしまうのだ。
そもそも学校にすら行けないのに働けるはずがない、と思っていた。
もちろん学校と違って遅刻やサボりはしないのだけれど。それは責任感なのだろうか。
とにかくその重圧に耐えられなくなってしまうのかもしれない。
大学に入学しても、学校に行けたり行けなかったり。そんな中バイトなんてしたら余計に体力を消耗して学校に行けなくなるのではないか。そんな不安もあった。
同じ学年の大学生たちは当たり前のようにバイトをしている。
僕は、普通になれない。。。
勉強は頑張れて、そこそこの偏差値の大学に入学できたとしても、出席もできなければバイトすらできない。
また、バイトをしていないと、当たり前だがお金がない。
友達は多くないので交際費はたいしてかからないが、それでも多少のお金はかかってしまう。
塾の収入は微々たるもの。
ひとり親家庭で、母の収入も多くない。
そんな母に学費を負担してもらいながら、最低限ではあるが生活費をもらわなければ生活できないこと。
たまに母にお金をくださいとお願いすること。
本当に苦しかった。
大学入学から1年経った春休み。
当然だが母からは「バイトくらいしなさい」と言われていた。
やっと重い腰を上げて僕は、働いてみようという気になったのである。
選んだのはネットカフェ。
友達が「ネカフェめっちゃ楽らしいで」と言っていたこと、
ダーツをしに何度か遊びに行ったことがあり、店の印象がよかったことが理由だ。
運よく採用してもらい、僕はいわゆる普通のバイトを久方ぶりにすることになったのである。
働く人たちに大学生が多いことが新鮮だった。
中華屋は一瞬で辞めてしまったが、スーパーはお昼だったこともあるし、郵便局はいわずもがな学生などいなかったのである。
働き始めてからというもの、たくさんの苦労があった。
まず、接客というものを、21歳にもなってしたことがなかったのである。
レジを打ったことももちろんなかった。
お客さんに対して料金の説明やら、使うブースの説明やら、とにかく話さなければならない場面があると慌ててしまう。
また、そもそも働く人の数が少ないのだが、その中でブイブイ言わせてる女子大生2人から嫌われてしまったり。。。
「アイツ、マジ使えないよな」という声が聞こえてきそうな感じだった。
何度も辞めようかと思ったけれど、だましだまし続け、1年経った。
今では仕事にも慣れ、緊張するようなこともなくなった。
なにより「普通に働けるんだ」とわかったことが一番大きかった。
接客業には向いていないし、好きでもないこともわかったけれど。
普通に「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」なんて言って、そこそこのトークもできる。
だれでもできる普通のことではあるが、引きこもりにとっては大きな一歩なのだ。
高校を中退して、オープン前の中華屋でバイトを始め、あまりのつらさにすぐに逃げてしまったとき
「僕は学校にすら行けないし、バイトすらできないんだ。。。」
と絶望した。
あまりの絶望感だった。
でも、それは場所が悪いだけだった。
どこに行っても、つらいことが全くないわけではないかもしれない。
それでも、自分に合ったところを探せばよかったんだ。
今、以前の僕のような絶望を感じている人がいるならば、それでも諦めないでほしいと思う。
周りの人間がいとも簡単にできることかもしれないけれど。
とりあえず働ければ、生きてはいけるはずだから。
自信をもって生きていたら、いいこともきっとあるはずだから。