価値観を変えた、メンヘラビッチちゃんとの出会い②
かくして、僕は初めて授業中に女の子に声をかけ、連絡先をゲットできたのである。
大学に通っていればそんなに珍しいことではないのかもしれないが、当時の僕はウキウキだった。
ところが、特にこれといってメッセージを送る口実もない。
テスト習慣が去り、夏休みに入っても、僕は彼女に何も送ることはなかった。
だって、無視とかされたら悲しいし。
長い夏休みのある日、彼女はLINEのプロフィール写真も自分のものではなかったので、顔も忘れてしまった頃だった。
彼女のLINEのステータスメッセージが更新されていることに気付いた。
~穏やかなる諦念~
???
なんのことかさっぱりわからん。てか諦めるに念でなんて読むんだ?
調べたところ、「ていねん」と読むらしい。ふーん。
そんなことはどうでもよくて、僕は確信した。
この子、絶対メンヘラだ!!!!!!!
ヘッダーも、「起こさないでください」というセリフが付いた眠っている女の子のイラストだった。
僕は、もし誰かと付き合うことがあるならメンヘラな女の子だろうと思っていた。
他愛もない話というのが苦手なのである。
それは、きれいなものをきれいと言えないような、みんなが好きなものを好きと言えないような、そんな感じだ。
とにかく、普通の大学生(しかも2歳下)とは価値観が違いすぎていた。
お互いが病んでいる心を持ち寄り、持ち前の分析力(?)でメンヘラな彼女を元気にしてあげたい。
そんな気持ちの悪い願望を抱いていたのである。
僕は意を決して、メッセージを送ってみたのである。
こんばんは。
経済の授業で一回隣になった〇〇です。覚えてるかな?
LINEのひとことがいつもポエムっぽいので気になってたよ(笑)
この前はノート見せてくれてありがとうΣ(´∀`;)
テストなんとかなった…かもしれない…笑
〇〇さんは大丈夫だった?
これ、本当に送ったものをさかのぼって張り付けた。
なんと彼女はこんなキモヲタのメッセージに返事をくれたのだった。
その後、出身が徳島であること、通学の大変さ、お互いサークル活動をちゃんとしていないこと、彼女はバイトをしていないことなどを話した。
彼女は、一人でいるのが嫌いじゃないと言った。
講義を受けるのも、昼食を取るのでも。
そして、少しメンヘラやからなぁ・・・とも言っていた。
そうこうしているうちに、毎日のように連絡を取るようになっていた。
僕は友達が少ないので、遊ぶ予定もなければ、メッセージのやり取りをする相手もあまりいないのである。
だから、僕は彼女とのメッセージのやり取りを楽しんでいた。
返事が来れば嬉しいし、来なければ気になってしまう。
まったく自覚することはなかったが、これは恋なのだろうか。
秋学期のはじめごろ、僕は彼女を昼食に誘った。
彼女もぼっちだというので快く承諾してくれた。
顔もあまり思い出せない、それでもやり取りを続けている女の子と再び対面するのである。この高揚たるや。
彼女がコンビニで買ってきた昼ご飯を手にして現れ、僕たちは大講堂の隣同士に座った。
僕は結構おしゃべりな方だ。
特に初対面となると、なにか話さなきゃ、とどうでもいい話題を提供してしまったりもする。
何を話したかはあまり覚えていない。
覚えているのは彼女のセリフ。
「私、メンがヘラってるからなぁ、はははー」
と言っていたこと。
僕が学食で買ったほうれんそうのお浸しを指しながら、
「醤油つけすぎちゃったわw目測を誤ってw」
と言ったことくらいだ。
そんなしょうもないことにも彼女は笑ってくれた。
大学で初めて女の子の友達ができたかもしれない。もしかしたらゆくゆくは彼女に・・・
ぼっちな彼女に手を差し伸べるヒーローにでもなったつもりなのだろうか。
僕はとにかく舞い上がっていた。
ところで、僕には当時唯一の学部の友達であるsくん(男)がいたのだが、その友達も徳島出身であった。
そのことを彼女にも伝えると、彼女も「会ってみたい」と言っていた。
京都の大学で、徳島出身の人はなかなか珍しいのである。
その2人を初めて引き合わせたとき、以外にもすぐに意気投合した。
sくんはどちらかというと人見知りをする方なのだが。
やはり地元トークって偉大。
しかも、お互い意識はしていなかったようだが、英語の授業(学部内で自動的に振り分けられる)が一緒だったようだ。
これだけ偶然が重なれば、仲良くなるのにそう時間も必要なかった。
そうして、僕たちは3人で授業を受けるようになったのである。
そんなある日、sくんと2人で話していたときだった。
sくん「あの子、なんか闇を感じるよね(笑)
僕「まぁ、自分でメンヘラって言ってるしね」
sくん「てかさ、首筋にある跡、見た?」
僕「え?なにそれ?」
sくん「キスマークっぽかったで?」
僕「キスマーク・・・?」
童貞の僕は、キスマークが何か知らなかったのである。sくんからそのとき教えてもらったことによると、どうやらそれは思ったより簡単につくらしい。
それでも僕はその時、そんなまさか、と思ったのである。
彼女は潔白で友達がいなくて傷ついた女の子だと。。。
僕「まぁでも、なんかどっかにぶつけたって言ってたしなぁ・・・」
sくん「今度聞いてみてや!w」
友達もいないという彼女にまさか彼氏がいるなんてことは考えてもみなかった。
しかし、抱いた疑念は少しずつ、明らかとなっていくのである。